関西電力高浜原子力発電所3、4号機(福井県)の運転を差し止める大津地裁の仮処分決定は、原発の再稼働に高いハードルを課した。大津地裁の決定は原発の安全審査を担う原子力規制委員会の判断を否定する内容。再稼働したばかりの原発が止まる想定外の事態で電気料金の引き下げをめざしていた関西電力の目算は狂い、企業や家計にも打撃が及ぶ。同様の司法判断が続けば、国のエネルギー政策の立て直しも遅れかねない。
大津地裁は決定で、安全対策に関する関西電力の説明を「不十分」と断じ、規制委による安全審査の合格も「(住民などの)安寧の基礎」にならないと指摘した。
意見が真っ向から対立した項目の一つが地震・津波対策。関電は周辺の活断層が連動して大規模な地震を起こす可能性なども踏まえ、揺れの想定を従来の550ガル(ガルは加速度の単位)から700ガルに引き上げる対策をとった。だが大津地裁は活断層などの調査が「徹底的に行われたわけではない」とし、過去に大規模な津波が発生しなかったと主張する関電の立場も「疑問なしとしない」と否定した。
決定では東京電力福島第1原発事故の教訓にも触れ、原因究明が不十分であるとの認識も示した。2013年に原発の新規制基準を導入した規制委の姿勢についても「不安を覚える」と指摘した。
国を代表する専門家らが議論して精緻に練り上げた安全規制の基準や、2年以上に及ぶ高浜原発への安全審査や検査の結果を、司法が全面否定した形だ。
「今の段階で申し上げることはない」。9日の記者会見で、規制委の田中俊一委員長は具体的なコメントは避けたが、規制委の権威が傷つけば、原発に対する信頼回復も望みにくくなる。
政府は表向き「世界最高水準の規制委の基準に合格した原発は再稼働する方針に変わりはない」(林幹雄経済産業相)と強調する。だがようやく再稼働にこぎ着けた原発の運転差し止めは15年、停止状態にあった高浜3、4号機に運転の差し止めを命じたとき以上に衝撃が大きい。
原発の運転差し止めを求める訴訟や仮処分申請は各地で相次いでいる。今回の住民側弁護団によると運転の可否が争われているケースは全国で約20件ある。川内原発1、2号機の運転差し止めを求める仮処分申請の即時抗告審は、近く福岡高裁宮崎支部が決定を出す。
安全審査に合格し、4月以降の再稼働を目指す四国電力伊方原発3号機(愛媛県)などに対しても、広島の住民らが近く運転差し止めを求める仮処分の申し立てと訴訟を起こす見通しだ。
政府は福島原発事故後も原子力を天候にも左右されずコストも安い基幹電源と位置づけてきた。昨年6月にまとめた30年度の望ましい電源構成(ベストミックス)で、全電源に占める原子力の比率を20~22%に設定した。達成には運転期間が40年を超える老朽原発も含め、30基程度の原発を動かす必要があるが足元は4基にとどまる。
エネルギーの安定確保や環境問題への対応をめざした国の目標の実現は大きく遅れる可能性が出てきた。
▼仮処分決定 仮処分決定は、切迫した危険を止めることを目的にしているため、直ちに効力を持つ。決定を受けた「債務者」が決定の効力を取り消すには異議を申し立て、地裁の別の裁判長が担当する異議審で決定を覆す必要がある。異議審で決定が覆った場合、「債権者」が不服として高裁に抗告する可能性がある。異議審で再び仮処分が認められた場合、債務者も高裁に抗告できる。高裁が下した決定に対しても、特別抗告するなどして最高裁の判断を仰ぐことは可能だ。
今回の大津地裁の仮処分決定では債務者が関西電力、債権者に当たるのが住民側。関電は高浜原子力発電所3、4号機の運転を停止しなくてはならず、「速やかに不服申し立ての手続きを行う」との方針を示している。
住民側は仮処分とともに、運転差し止め訴訟も大津地裁に起こしている。この訴訟で関電側が勝訴し判決が確定すれば、仮処分決定の効力は失われる。ただ、差し止め訴訟も仮処分決定を出した同じ山本善彦裁判長が担当しているため、判断が覆る可能性は低いとみられる。訴訟が高裁、最高裁まで争われる可能性もありそうだ。
今回の大津地裁の仮処分決定では債務者が関西電力、債権者に当たるのが住民側。関電は高浜原子力発電所3、4号機の運転を停止しなくてはならず、「速やかに不服申し立ての手続きを行う」との方針を示している。
住民側は仮処分とともに、運転差し止め訴訟も大津地裁に起こしている。この訴訟で関電側が勝訴し判決が確定すれば、仮処分決定の効力は失われる。ただ、差し止め訴訟も仮処分決定を出した同じ山本善彦裁判長が担当しているため、判断が覆る可能性は低いとみられる。訴訟が高裁、最高裁まで争われる可能性もありそうだ。
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